訪問時の書き置き

ビジネスの場面では今や必ず見る事のあるビジネスアイテムが「名刺」です。
日本での一般的なサイズが91ミリ×55ミリのこの小さな紙片の起源はどこから来たのでしょうか。 その歴史は意外に古く、今から約2千年前、古代中国の後漢から始まったとされています。
当時は今のような紙片ではなく、木や竹の札を用いていました。この木札や竹札を「刺」と呼んでいたようです。
この頃の使用方法は現代の名刺とは少し違い、誰かの家を訪問した時に、家の前に置かれている箱に自分の名前と身分を書いた「刺」を入れて取り次ぎを要請する、あるいは戸口に刺し込んで訪問を告げるものから始まったようです。「名紙」ではなく「名刺」という漢字はここから来ているのです。

古代とはいっても、当時の中国はすでに高度な官僚社会が形成されていたので、地位のある人物に面会するのはそれなりに手順が必要になっていました。その際に使われたのが、この「刺」と呼ばれる「名刺」の起源と考えられるものでした。現代社会のアポイントに少し似ています。
これを裏付ける資料が、1984年に三国時代の呉の武将の墓から発見されました。
その副葬品の中から彼の「名刺」が発見され存在が確認されており、これが現存する最古の名刺とされています。
そして時代が進み、7世紀の唐の時代の書物にも登場していますが、やはり同じような使い方をされていたようで、中国の高度な官僚社会の中での必須アイテムだったようです。

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社交界のアイテム

中国以外の国ではどのように始まり、変化していった歴史があるのでしょうか。
ヨーロッパに目を向けると、16世紀のドイツで最初に名刺が使われたと言われています。ここでの使い方も古代中国に似ています。
つまり誰かの家に訪問した時に、訪問先が不在であった場合に訪問したことを告げることを目的に、自分の名前を書いたカードを残すという使い方から始まったようです。
その後、17世紀から18世紀頃になると、社交界での貴族の中で流行し、彼らの必須アイテムとなっていきました。
当時はトランプの裏側に自分の名前を書いたものを使用したり、今とは違って銅版画を入れた華やかな図柄が入っているものなどがありました。社交界のアイテムとなっているので、使い方などのマナーなどの約束事もきちんと決まっていたようです。
又、19世紀になるとフランスの写真家によって写真入りの名刺も登場しています。
このような事から、現代社会での使い方と似ている側面も出てきていますが、ただもともとが来訪を告げたりお礼やお悔やみなどの何らかのメッセージを伝えたりするためのカードであった事から、今のようにビジネスの場で使用されている用途とは少し違っていました。

ところで日本での始まりはどうでしょうか。日本では江戸時代から使用され始めていたようです。
中国とは違い、紙片に墨書したものが使われていたようですが、当時の日本はやはり中国の文化の影響を濃く受けていたので、訪問時に相手方が不在であった場合、戸口に名刺を刺し込んで来訪したことを告げるという使い方であったようです。
ヨーロッパと向き合うようになる幕末からは、現代の用途に似たものに変化していきます。外国人と接する役人は、家紋を記しその下に名前を書いたものを使用していたようです。鹿鳴館時代になる頃には、ヨーロッパの社交界での使用方法が影響してきます。

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現代人の挨拶へと

名刺の歴史は、本来の来訪を告げるものや人との面会の取り次ぎを要請するところから始まり、現代日本での主要な使用方法である社名や肩書きを入れたビジネス用に変化してきました。

名刺は英語では「Business Card」もしくは「Visiting Card」などといったいくつかの表記に分かれます。これはそれぞれのカードの使い方が違うからです。
先にも述べましたが、歴史的にはもともと来訪を告げるものから出発したものになるので、「訪問」「来訪」を告げるものという意味で本来の使い方であれば、「Visiting Card」となります。それが現代の日本で多くの場面で使用される、会社名と肩書き、業務内容などを記した名刺は「Business Card」となります。
大雑把に言えば、「Business Card」が会社やその業務内容などを知らせるものであるなら、「Visiting Card」などの「Business Card」以外の表記のものは個人の挨拶を記したものと考えても良いでしょう。
日本人は、ビジネス以外の用途で名刺を交換する事はなかなか少ないと思いますが、世界に目を向けてみると、その本来の使用目的である、個人の挨拶をするものとして使用しているものも多々あります。
そのように考えれば、名刺をただ単なるビジネスだけで使うものとして捉えてみるだけでなく、現代人の気軽な挨拶程度に使ってみるなど、名刺の新しい使用方法として考慮してみても良いかもしれません。 

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更新日: 2020/01/28 カテゴリ: ビジネスシーン
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